若い人のための洋楽ロック&ポップス名盤案内

やがて聴かれなくなるかもしれない'60~'80の海外ロックやポップスの傑作(個人的な意見)を紹介します。

Vol.1 AVALON  ROXY MUSIC 1982

もはや西方浄土の世界、英国モダンロックの到達点。

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アヴァロン/ロキシー・ミュージック

 30数年来のロキシーファンだから、ひいき目ではあるが『アヴァロン』は、評価もさることながら、唯一無二という点でも永久不滅の名にふさわしい名盤といっていい。

 

 全英チャート3週連続1位。ニューウェーブのアーティストらに大きな影響を与えた、モダンが持ち味の英国ロックバンドの到達点的作品ということもあるが、名盤といえる理由は、後にも先にも聴いたことがない、うっとりするサウンドの持つオリジナリティにある。

 

 『アヴァロン』のサウンドは、それまでのアルバムと比べて、ロックというよりソウル、ファンクの色合いが濃い。もともとロキシーの本質は、ロックンロールやブラックミュージックのモダン(洗練とアヴァンギャルド)な解釈だから不思議ではない。初期のアルバムと『アヴァロン』を聴き比べると同じバンドとは思えないのだが、やっていることはあまり変わっていない。

 

 ただロキシーは再結成した79年あたりから、サポートメンバーにも手練れのミュージシャンを起用し緻密な音づくりを進めるようになった。そのため洗練さが増し、ブラックミュージックの再構築という本質が露わになっていったように思う。それでも前作『フレッシュ・アンド・ブラッド』では、ロキシーらしいモダンなロック、ポップの完成形を見せてはいたが、『アヴァロン』では一気に別次元へと突き抜けた。

 

 ソウル、ファンクにある泥臭さを消し去った、夢見心地のグルーブにメロウネスのあるメロディ。そこにブライアン・フェリーのクルーン・スタイルのヴォーカルが精霊の声のように漂う。ミディアムとスローなテンポ、ポップな曲ばかりでとても気持ちがよい。そんなサウンドを不思議な音響が包みこんでいる。

 

 その音を作った魔法使いは、今や名ミックスエンジニアのボブ・クリアマウンテン。広くて奥行きの深いエコーは芸術的だ。ジャケットのイメージのせいもあるが、西方浄土を思わせる音空間を作り上げた。

 

 エコーの響きは深々としているのに、ヴォーカルや楽器の音はこもることがなく、しっかりと際立ち、強弱もくっきり表現している。緻密なプロダクションである。かつてCDにする必要のないくらい素晴らしい音質といわれた。

 

 『アヴァロン』とはケルト伝説に出てくる極楽島の名である。アーサー王などの英雄が死後に精霊となって住む島だ。パラダイス的な開放感に満ち溢れてはいるが、音の世界観はこの世ではなく、あの世の楽園を思わせる。

 

 捨て曲なしの心地よいサウンドと、細部にまで計算しつくされた音響から生まれたオリジナリティ。『アヴァロン』で行きつくところまで行った。これ以上のものは無理と思ったのか、ロキシー・ミュージックはここで2度目の解散。到達したのだ。2001年以降、ライブで再結成するが、オリジナルアルバムとしてはラストになった。だから永久不滅と言いたい。

 

♪好きな曲

 

More than this

アルバムに先立ってシングルとしてリリース、全英6位。邦題の「夜に抱かれて」は意味不明。さわやかなメロディのポップなナンバー。ノラ・ジョーンズのカバーもなかなか。

 

 

 

The space between

ベースのリフがカッコいいファンク。それなのになぜかライブでやっていない模様。

 

 

 

To turn you on

君のためなら何でもするさというラブソング。都会的ソウル風のメロディ、アレンジも洒落ている。