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若い人のための洋楽ロック&ポップス名盤案内

やがて聴かれなくなるかもしれない'60~'80の海外ロックやポップスの傑作(個人的な意見)を紹介します。

Vol.4 What’s Going On Marvin Gaye 1971

ソウルの枠をはるかに超えた、音楽世界遺産級の大傑作。

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ワッツ・ゴーイン・オン/マーヴィン・ゲイ

 慈愛と哀しみの切々たる35分。あまりに有名なソウルの大名盤であるが、人類が滅亡するその日まで聴き継がれて欲しいアルバムだ。

 

 『What’s Going On』は前半がメドレー展開で、後半はズシリとした渋い3曲が並ぶ。サウンドの雰囲気は統一されて、全編に社会的なテーマが歌われている。

 

 翳りのあるメロディとゆったりとしたグルーブをバックに、マーヴィンがときに哀しく、ときに希望の光を灯すかのように歌う。ここでのマーヴィンの歌声はマイルドだ。聴きどころは、高らかに盛り上がっていく前半のメドレー。何度聴いても素晴らしいし、飽きない。

 

 サウンドを決定づけているのは、流麗なストリングスのアレンジ、多重ヴォーカルやバックコーラス、パーカッションによるポリリズムで、なんとも心地よいゆらぎとふくよかさを生み出している。ただ、歌われる内容は対照的で、とてもシリアスである。

 

 戦争、環境問題、人種差別など深刻な社会問題が取り上げられているが、マーヴィンは解決への連帯や共感を煽ることなく、ジャケットの写真のように苦悩しながらも穏やかに訴える。それだけに歌が切実に伝わってくるのだ。

 

 今では不朽の名作『What’s Going On』も発表当時は異色作だった。はつらつとしたラブソング中心のモータウン(レコードレーベル)・サウンドとは対照的であったし、セックスシンボルであったマーヴィンのイメージを覆すものだった。

 

 当時マーヴィンは最愛のデュエットパートナーであったタミー・テレルを亡くし、失意のまま引退同様の暮らしを送っていた。そんな時に勧められた曲が「What’s Going On」。最初は気乗りしなかったが、説得されて重たい腰を上げたという。

 

 不遇をかこっていた天才肌のソウルシンガーに訪れた一瞬の天啓。それを逃さずに神々しいほどの作品へと昇華させた、マーヴィンのサウンドクリエイター、ソングライターとしての才能は見事の一言。

 

 モータウンの社長、ベリー・ゴーディは「What’s Going On」のリリースに反対で、今まで聴いた中で最悪のレコードとこき下ろしたという。しかし、じわじわとヒット、続けて制作されたアルバム『What’s Going On』もヒットし、シングルカットされた「Mercy Mercy Me」、「Inner City Blues」もR&Bチャート1位を獲得、大名盤としての名声を固めていくのである。

 

 以降、マーヴィンは聖愛から性愛の人になって、セックスや愛の歓びを讃え上げていく。私生活のトラブルも続き、一時はどん底状態を味わったものの再び復活、1983年にはグラミー賞まで獲得。しかし、その栄光もあっけなく終わる。翌年の4月1日、牧師の父親に撃ち殺されてしまう。

 

 波乱万丈で、What’s Going On(どうなっているんだ!)な人生を送ったマーヴィンだが、ブラックミュージックのアーティストで影響を受けたとか、尊敬しているという人は後を絶たない。存命ならさぞかし、これぞマーヴィン!な名曲をもっと聴くことができたのにと思うと悲しい気持ちになる。

 

 

♪好きな曲

 

What’s Going On

いまだに多くのアーティストにカバーされる至上の名曲。R&Bチャート5週連続1位、全米2位。

 

 

What's Going On

What's Going On

 

Mercy Mercy Me

マーヴィンが一人で書いた曲で、内容は環境問題。ロバート・パーマーのカバーもカッコいい。

 

 

 

Inner City Blues

世の理不尽への不満が時折、シャウトを交えて歌われる。聴くごとに好きになった渋いソウル。