若い人のための洋楽ロック&ポップス名盤案内

やがて聴かれなくなるかもしれない'60~'80の海外ロックやポップスの傑作(個人的な意見)を紹介します。

Vol.6 Tapestry Carol King 1971

 

スタンダード級の名曲が揃った、

決して色褪せない私小説的作品。

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つづれおり/キャロル・キング

 15週全米1位を獲得しただけでなく、約6年も100位以内にチャートインし続けた色褪せない名盤。もし『つづれおり』が21世紀の今、新作として出たとしても、当時と同じように、聴いた人の心を癒し、自分や人生について新たな発見をさせてしまうだろう。もちろん称賛され、ヒットして、愛され続けられるに違いない。

 

 『つづれおり』は、シンガーソングライターとしてのキャロル・キングを大きく印象づける作品になった。68年にシティというバンドでデビューし、70年にソロデビュー。『つづれおり』は2作目になる。

 

 キャロルはこの時、30歳。彼女は裏方から表の世界へ飛び立ったのだ。と言うのも、それ以前の彼女は60年代のアメリカンポップスのヒットメイカーだった。キャロルと夫ジュリー・ゴフィンは職業作曲家と作詞家チームとして活動。61年から63年の間に4曲も全米1位を獲得するなどヒット曲を量産していた。

 

 ただ『つづれおり』に収められた曲は、ヒットメイカー時代の甘い口当たりのポップスとはずいぶんと違う。全体的にR&Bの色がやや強く、ビタースウィートな雰囲気がある。素朴な印象もあるが、それはどの曲も輪郭がはっきりとしているので余計な飾りを必要としなかったのだ。

 

 バックはジェイムズ・テイラー、ダニー・クーチマーなど、キャロルとは気心しれた仲間たちが支えているだけはあって、彼女のピアノと歌を最大限に引き立てている。レコーディングはスタジオの中でミュージシャンと作り上げていくスタイルだったという。

 

 このやり方を実際に目撃した音楽プロデューサー村井邦彦は後にユーミンの『ひこうき雲』のレコーディングに取り入れたという。その影響かどうかは分からないが、『つづれおり』にある内省的、私小説的世界観とみずみずしい佇まいは、『ひこうき雲』、『ミスリム』と通じるものがある。

 

 『つづれおり』を決定づけているのはサウンドだけでない。キャロルはほとんどの曲の詞も手掛けている。彼女と同時代に活躍した早熟のシンガーソングライター、ローラ・ニーロは「『つづれおり』は素晴らしいアルバムだわ。女性の気持ちを捉えているし、そこには普遍的な真実が歌われている」というコメントを寄せた。

 

 『つづれおり』からは「It’s too late」、「So far away」がシングルカットされ大ヒット。「You’ve got a friend」はジェイムズ・テイラーがカバー、全米1位を獲得した。その他にも作曲家時代の「A Natural woman」、「Will you love me tomorrow」などポップスのスタンダード級の名曲が揃っている。たまに聴き返すと感動で涙ぐんでしまう時がある。

 

 72年のグラミー賞で『つづれおり』は最優秀アルバム賞、最優秀女性ポップ・ロックヴォーカル賞などを受賞。70年代、キャロルはシンガーソングライターとして黄金時代を迎えることになる。

 

 

♪好きな曲

 

It’s too late

初めて聴いたキャロルの曲。別れを歌ったジャージーな雰囲気が切なく響く。全米1位でグラミー賞レコード・オブ・ザ・イヤー。

 

 

It's Too Late

It's Too Late

 

You’ve got a friend

優しく語りかけるように、何もかもダメだった時は私を読んで、すぐに駆けつけるからと歌われる。弱っている時に聴くと泣きそうになる。グラミー賞ソング・オブ・ザ・イヤー。

 

 

You've Got a Friend

You've Got a Friend

 

So far away

これまたメロディが美しい。カバーではクルセイダーズのバージョンが素晴らしい。

 

So Far Away

So Far Away