若い人のための洋楽ロック&ポップス名盤案内

やがて聴かれなくなるかもしれない'60~'80の海外ロックやポップスの傑作(個人的な意見)を紹介します。

Vol.7 IV LED ZEPPELIN 1971

評論家やファンを黙らせ、

予想の斜め上をいったロックの金字塔。

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IV/レッド・ツエッペリン

 静と動、激しさと穏やかさが見事に編み込まれた壮麗なアルバムだ。ツエッペリン(以下、ゼップ)はハードロックのかたくななイメージを覆しただけでなく、ファンや評論家の予想を超え、唯一無二の音楽スタイルを確立した。

 

 ゼップの中で最大のヒットとなった。全英1位、62週もチャートイン。アメリカでもすぐにベストセラーとなり、1990年にはアメリカで最も売れたアルバムとしてビルボード誌から認定。ただ全米1位は逃した。当時、キャロル・キングの『つづれおり』から首位を奪うことはできなかった。

 

 ゼップのアルバム中、ひときわ美意識に貫かれたアルバムだ。他のハードロックよりも、イエスの『サード』や『こわれもの』に近いと思う。正式なアルバムタイトルはないが、通称でⅣやUntitled、Four Symbolsなどと呼ばれている。

 

 なんといっても「天国の階段:Stairway to heaven」だ。この曲がアルバム中で白眉であることは間違いないし、もし入っていなかったら評価も売れ行きも変わっていただろう。しかし他の曲も素晴らしく完成度は高い。

 

 ギターのノイズが聞こえた後に、ロバート・プラントア・カペラを合図にジミー・ペイジの複雑なギターリフが鳴り響く。アルバムはこの「Black dog」で幕が上がる。渋いハードロックナンバー。そして次の「Rock and roll」で加速する。

 

 ロックンロールというのは、たとえばチャック・ベリーの曲のような軽快で小気味よいノリが魅力だが、ゼップは違った。激しく重いのだ。戦車が砲弾をドカドカと撃ちまくりながら突っ走っている感じだ。それなのにグルーブはしっかり表現されている。

 

 激しい2曲の後にマンドリンの音色が美しいトラッドフォーク風の「限りなき戦い:Battle of evermore」が気持ちを鎮めてくれる。そしていよいよ不朽の名曲「天国の階段」が登場する。

 

 牧歌的なオープニングから徐々にロックへとサウンドがドライブし、入魂のギターソロでクライマックスを迎え、静かに終わるという見事な構成。歌詞は未だにいろいろな解釈がなされているほど謎めいているが、そこが面白くもある。

 

 ここまででも十分すぎるほどの聴きごたえだ。感動の余韻に浸っていたいならここで小休止。後半は「Misty mountain hop」、「Four sticks」とグルーブの効いた曲、アクースティックな「Going to California」と続き、クロージングにふさわしいハードで迫力ある「When the levee breaks」で幕を閉じる。

 

 アルバム発表後にメンバーのジョン・ポール・ジョーンズは「これでブラック・サバスとは比較されなくなった」と言ったという。もともとゼップはブルーズやトラッド、フォークといった音楽を取り込み、スタイルを築き上げてきた多様な音楽性をもったバンドだ。

 

 このアルバムはそれまでのゼップの集大成と言っていい。この後、さらにファンクやレゲエ、ワールドミュージックをも吸収しながら進化を遂げていく。ハードロックはあまり聴いてこなかったが、ゼップだけ聴き続けているのも広くて深い音楽性に惹かれているからだ。

 

♪好きな曲

Stairway to heaven

哀愁を帯びたメロディやギターの旋律が美しい。緻密なアンサンブルで編まれた8分間の壮大なドラマ。

 

 

Stairway to Heaven

Stairway to Heaven

 

 

Going to California

ジョニ・ミッチェルに捧げた、穏やかな小品。ギターとマンドリンの音色が気持ちいい。

 

 

Going to California

Going to California

 

When the levee breaks

エコーの効いた巨大なドラムに圧倒。ギターとブルースハープのからみもカッコいい。1929年作のブルーズをハードに改作。

 

When the Levee Breaks

When the Levee Breaks