Vol.11 LET IT BLEED THE ROLLING STONES 1969
名曲、ライブ定番曲が揃った、
ストーンズ流スワンプ・ロック。
レット・イット・ブリード/ローリング・ストーンズ
古典ブルーズやカントリーなど米国南部ルーツ・ミュージックを咀嚼し、ストーンズ流スワンプ・ロックを確立。音楽的、名声ともに飛躍を遂げた‘70年代の発火点となった’60年代ロックの傑作。全英1位、全米3位とダブルプラチナを獲得した。
ストーンズの中で一番好きなアルバムだ。聴き飽きることがない。ロックアルバムとしても、捨て曲、無駄な曲のない完璧なアルバムの1枚だと思う。名曲に始まり、名曲で終わるから、聴き終えた後の満足感が違う。もちろん、その間にも人気曲やライブの定番曲が詰まっている。
ルーツ・ミュージックへの再接近を図った、前作『ベガーズ・バンケット』で再び成功と高い評価を得たストーンズは、方向性に確信をもって『レット・イット・ブリード』に臨んだと思う。だから、これだけの完成度の高い曲が揃ったのだ。
とは言え、レコーディング中にオリジナルメンバーのブライアン・ジョーンズの脱退と不可解な死、ミック・テイラーの加入、アルバムリリース直前のコンサートでは「オルタモントの悲劇」が起きるという穏やかならない状況にあった。
スキャンダラスなイメージで語られることが多いが、ストーンズはかなり職人気質の高いバンドだと思う。この時期、古典ブルーズやカントリー、サザンソウルといったアメリカ南部の音楽を吸収し、冷やかさと熱さが交じり合った彼らなりのスワンプ・ロックを作り上げた。
不穏な雰囲気のイントロから導かれる冒頭の「Gimmie Shelter」は緊迫感漂うソウルフルなナンバー。キース・リチャーズのギターが、粘りと弾力のあるビートに絡んで独特のリズムを生み出す。この思わず身体が動くグルーブこそがストーンズだ。
「Honky Tonk Woman」(全米4週連続1位)のカントリー・バージョン「Country Honk」や、ほんのりとした土臭さとルーズなリズムが心地よい「Let It Bleed」がいい具合にアルバムに緩やかさを添える。
一方で「Live With Me」や「Midnight Rambler」、「Monkey Man」といったライブ映えするロックンロール、R&Bナンバーも繰り出される。楽曲のバランスが見事だ。それにイアン・スチュワート、ニッキー・ホプキンスらのピアノやオルガンがとてもいいアクセントを出しているおかげで多彩な音が楽しめる。
ラストを飾るのは「無情の世界:You Can’t Always Get What You Want」。ゴスペルタッチの曲だが、ロンドンバッハ合唱団のコーラスが壮麗な雰囲気を生み、大団円にふさわしい雰囲気を創り出している。
最高傑作と言われる次作『スティッキー・フィンガーズ』の方が完成度は高いが、聴くたびにみずみずしさを感じる点で、こちらの方を聴いてしまうのだ。
ところで今作が出た1969年は『アビー・ロード』、『レッド・ツェッペリンⅡ』、『クリムゾンキングの宮殿』、『クロスビー、スティルス&ナッシュ』…’68年同様にロック名盤の豊作の年でもあった。
♪好きな曲
Gimmie Shelter
戦争、殺戮、レイプが始まる、避難所くれ!とソウルシンガー、メリー・クレイトンとデュエットする緊張感みなぎるライブの定番曲。
Let It Bleed
地味だが、ゆったりしたノリがクセになってくる。日本だけでシングルカットされた。
You Can’t Always Get What You Want
欲しい時に限って手に入らない、と冷めた内容のわりには、希望を感じさせる雰囲気がある。これもライブ定番曲。