若い人のための洋楽ロック&ポップス名盤案内

やがて聴かれなくなるかもしれない'60~'80の海外ロックやポップスの傑作(個人的な意見)を紹介します。

Vol.16 THE DOORS 1967

文学的な世界観と多様な音楽性を

内包、熱気をはらんだクールな衝動。

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ハートに火をつけて/ザ・ドアーズ

 デビューアルバムにして、ロックのマスターピースとなった名盤。バンドの最高傑作という点では次作『まぼろしの世界』が挙げられることも多いが、有名な代表曲が3曲収められているし、世の中やロック史の中での影響の大きさから考えると、本作の方を選んでしまう。それに売れた。全米2位、ゴールドディスク認定。

 

 はじめてこのアルバムを聴いた時、なんてカッコいいんだと思った。最も印象的だったのがオルガンとギター。それはロックではなく、ジャズを思わせた。もっとも当時はそれほどジャズを聴いていないので、ジャズっぽいというレベルではあったが。

 

 オルガン担当のレイ・マンザネクによると、ドアーズはヴァン・モリソンがいたロックンロールバンド、ぜムの影響が大きかったということだが、そこにマイルズ・デイビスジョン・コルトレーンといったジャズやクラシックの要素を入れたら、ドアーズのサウンドになったという。

 

 ドアーズはアルバムごとにサウンドも少しづつ変わっていくわけだが、最もジャズ色が濃く、ラテンやブルーズが交じり合った熱気を感じさせつつも、クールでグルーブな音を持っているのが、このデビュー作である。個人的には本作のドアーズが一番好き。

 

 高校生の時に観た『地獄の黙示録』がドアーズとの初めての出会いだったせいか、「The End」を聴くと、今でも禿げ頭のマーロン・ブランドやパンツ一丁でクネクネと踊るマーティン・シーンなど劇中シーンがフラッシュバックする。完全に両者がひもづけされて記憶されてしまっているのだ。

 

 そしてドアーズをドアーズ足らしめているのがヴォーカルのジム・モリソンである。詩人であり、作曲家であり、セックスシンボル。そして、酒とドラッグの中毒者。カウンターカルチャーの英雄。文学、哲学、映画からの影響による世界観をドアーズに持ち込んだのはモリソンだ。

 

 バンド名もモリソンが命名した。詩人ウイリアム・ブレイクの詩の一節「知覚の扉が浄化されると、あらゆることが本来の姿を示すだろう、永遠に」の「知覚の扉」からヒントを得た。

 

 ‘71年7月3日、パリのアパート(クラブのトイレ説も)でモリソン死亡。死因は公式にはアルコール中毒だが、ヘロイン中毒とも言われている。ドアーズは実質、ここでジ・エンド。活動期間はわずか4年だった。

 

 にもかかわらず、その評価は今も絶大だ。イギー・ポップパティ・スミスなど主にパンク、ニューウェイブのミュージシャンに多くの影響を与えたし、ストラングラーズなんて、パンクのドアーズという感じだ。

 

 冒頭から、向こうまで突き抜けろ!と煽り、ハートに火をつけて、激しく燃え上がろう!とハイになりながらも、最後はこれで終わりだ、すべては終わりだと諦観でしめくくる。まるでモリソンの一生を歌ったような内容じゃないか。とあらためて本作を聴いて感じた。できすぎだ。

 

♪好きな曲

 

Break On Through (To The Other Side)

リムショットによるラテンっぽいグルーブがカッコいい。歌詞はモリソンの人生テーマそのもの。

 

Break On Through (To the Other Side)

Break On Through (To the Other Side)

 

 

Light My Fire

全米3週連続1位、ロックのスタンダード。1分過ぎから始まるジャズロック風のオルガンとギターソロが圧巻。聴くならアルバムバージョンを。

 

 

 

Light My Fire

Light My Fire

 

The End

父親殺し、母親との近親相姦をうたった歌詞で知られる。中近東風のギターと語りのような歌は荘厳でさえある。

 

 

The End

The End