Vol.19 Revolver The Beatles 1966
革新的なスタジオワークから生まれた、
創造性あふれる意欲作。
リヴォルバー/ビートルズ
レコーディングバンドに生まれ変わったビートルズの新たな一歩は、進化したソングライティングと革新的なスタジオワークが融合、彼らのアルバムの中でも、ひときわクリエイティビティを感じさせる作品となった。
デビューして3年、同じようなツアーの繰り返し、慌ただしいレコーディングに追われていたビートルズは、アーティストとしての成長を自覚しながらも、それを発揮する機会が与えられず大きな不満を抱えていた。
‘65年12月に『ラバー・ソウル』をリリースし、イギリスツアーを終えると、はじめて3カ月という長い休暇をとる。そして翌年4月、溜まっていた不満を発散するかのようにレコーディングを開始。わずか2か月で16曲を仕上げた。そのうち14曲が『リヴォルバー』に収められた。
彼らの新しいサウンドは、当時の技術では、ライブでの再現が不可能なものばかり。それはレコーディングバンド、ビートルズとしてのスタートを意味した。
『リヴォルバー』は随所にギミックが仕掛けられたサウンドに仕上がった。ギターやヴォーカルの逆回転、テープ処理によるループや速度の変更などにより、それまで聴いたことがない音が生まれたのだ。
ビートルズの遊び心ある実験を支えたのは、ジェフ・エメリック(当時まだ20歳!)、ケン・タウンゼントという若きエンジニアたち。彼らはビートルズの無茶?な要求に斬新なアイデアとテクノロジーで応えた。こうしたトライは次作『サージェントペパーズ~』で大いに発揮される。
むろん、ビートルズのソングライティングも演奏も冴えわたっていた。当時、ドラッグカルチャーに影響を受けたジョンは、先鋭的な曲づくりに挑み、ポールはメロディメーカーとしてますます磨きのかかった曲を生み出し、ジョージの曲がはじめて3曲も採用された。
また、はじめてゲストミュージシャン(ストリングスやホーン)を起用したことで、アレンジが多彩になり、さまざまスタイルの曲が揃った。実験的ともいえるギミックを多用しているにもかかわらず、ポップな感じに仕上げてくるところは、さすがだ。(後にこの路線は10ccが受け継ぐ)
ビートルズ流ファンクの「タックスマン」から、いきなり歌とストリングスで始まる「エリナ・リグビー」。この冒頭の流れを聴いただけでも、『リヴォルバー』がこれまでとは違うことを予感させる。最後のループを駆使したサイケな「トゥモロー・ネバー・ノウズ」まで、次々と創造性に富んだ、新しいビートルズサウンドが繰り広げられ、予感が確信に変わる。
先行シングルの「ペイパーバックライター」、「レイン」が収録されていたら、もっと評価が上がっただろう。全米、全英ともに1位。21世紀の今からフラットに見つめても、『リヴォルバー』は、次作『サージェントペパーズ~』ほど時代を感じさせないし、言われるほどサイケでもない。その分、経年を感じさせず、飽きない。時が経つほどそう思える名盤だ。
♪好きな曲
Tomorrow Never Knows
逆回転、テープループ、コラージュが駆使されまくっているのにポップな聴き心地、このカッコよさといったら!
And Your Bird Can Sing
なぜか胸がキュンとなるイントロのギター。初期ビートルズらしいナンバー。
Here,There And Everywhere
ポールらしい美しいメロディとコーラスが印象的。ビーチ・ボーイズの「God Only Knows」に触発されて作ったらしい。