若い人のための洋楽ロック&ポップス名盤案内

やがて聴かれなくなるかもしれない'60~'80の海外ロックやポップスの傑作(個人的な意見)を紹介します。

Vol.20 Songs In The Key Of Life Stevie Wonder 1976

名曲、ヒット曲がたっぷり、

神がかった絶頂期の総決算。

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キー・オブ・ライフ/スティーヴィー・ワンダー

 神がかっていた、と言われる70年代のスティーヴィーの総決算的アルバム。全米No1シングルをはじめ、代表曲がそろった充実の内容。レコード盤では2枚組(4曲入りEP付)、全21曲というボリュームながら、全米1位。グラミー賞アルバム・オブ・ザイヤー、ベスト・プロデューサー・オブ・ザ・イヤーも獲得した。

 

 70年代に入ってからスティーヴィーは、自らプロデュース、作曲、演奏に取り組み、それまでのシンガーという位置からスケールアップしようとしていた。そうした創造への飽くなき意欲と才能が相乗したのだろう、スティーヴィーは神が降りてきたかのごとく、驚異的なペースでアルバムを制作した。

 

 72年の『心の詩』、同年の『トーキング・ブック』(全米3位)、‘73年の『インナーヴィジョンズ』(全米4位、グラミー賞最優秀アルバム)、’74年の『ファースト・フィナーレ』(全米1位、グラミー賞最優秀アルバム)といずれも、高い評価を受け、商業面でも大成功をおさめた。

 

 『キー・オブ・ライフ』は、そんな70年代の総仕上げであり、スティーヴィーのピークを示す内容となった。楽曲も彼らしく、ソウル、ファンクだけでなく、サンバ、ボサノバなどラテン、ポップスとさまざまなタイプが並んでいる。この多様性はスティーヴィーならではのものだ。

 

 ブラッシュアップされていない曲もあって、玉石混交といわれるが、それでも玉にあたる曲の出来ばえが素晴らしいので、石もあまり気にならない。

 

 スティーヴィーに珍しく、出だしは地味だが、4曲目のグルーブなインストを挟んで、当時、日本の歌謡界でも人気で、キャンディーズもカバー(僕はピンクレディーのライブ盤で知った、それがスティーヴィーとの出会い)したヒット曲「Sir Duke」と、ファンクナンバー「I Wish」が続くあたりになると、熱量が上がってくる。ボッサ調のリズムとオルガンソロが気持ちよい「Summer Soft」は隠れた名曲という印象で好きな曲、でも1枚目はやや地味。

  

 2枚目は「Isn’t She Lovely」ではじまる。多幸感のあるメロディとハーモニカソロがいい。スティーヴィーのハーモニカはいつも素敵だ。シングルカットされた「As」や「If It’s Magic」は、メロディメイカーとして本領を発揮。サンバのグルーブとコーラスが熱い「Another Star」は問答無用のカッコよさ。名曲だらけ、実に聴きごたえのあるアルバムである。

 

 80年代に入ると、日本でもCMに登場して、親しみのある黒人のポップス歌手と受け止められていた印象があったが、70年代のスティーヴィーは、シンセサイザーとレコーディング技術という、新しい武器を存分に使いこなす、天才クリエイターだった。

 

 今から考えても、この時期が絶頂期。一度は聴いて欲しい。当時、2枚組なので高校生の自分には高価だったが、無理して小遣いをはたいて買った。いっぺんに聴くともったいないので、数曲づつ聴いていたものだ。はぁ、貧乏くさい。

 

♪好きな曲

 

Isn’t She Lovely

邦題「可愛いアイシャ」。アイシャはスティーヴィーの愛娘。いつまでも聴いていたいようなメロディ。

  

Isn't She Lovely

Isn't She Lovely

 

Another Star

8分以上の長尺を感じさせない、高揚感たっぷりのリズムとコーラスがきまっているサンバファンク。 

 

Another Star

Another Star

 

I Wish

邦題は「回想」、全米1位。パンチのあるブラスと当時は短音しか出ないシンセを重ねて作ったグルーブがカッコいい。ドラムはスティーヴィー。

 

I Wish

I Wish