若い人のための洋楽ロック&ポップス名盤案内

やがて聴かれなくなるかもしれない'60~'80の海外ロックやポップスの傑作(個人的な意見)を紹介します。

Vol.24 “HEROES” David Bowie 1977

ボウイ史上、最強のメンバーと

創り上げたロックは、ダークでアグレッシブ。

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ヒーローズ/デイビッド・ボウイ

 名作『ロウ』に続く、ベルリン時代の2作目。名曲「Heroes」を収めた、ダークで切れのあるサウンドがすこぶるカッコいい!完成度では前作を上回っている。全英3位、全米35位。

 

 はじめて買ったボウイのレコードだ。その時の邦題は「英雄夢語り」。個人的な好みもあるが、ボウイが一番カッコよかった時代の、一番カッコいいアルバムだと思っている。

 

 まずジャケットがカッコいい。鍬田正義(ボウイを撮り続けてきた名写真家)の撮影によるボウイは、地球に落ちてきた宇宙人、あるいはヴァンパイアのような、神々しさと禍々しさを放っている。奇妙なポーズは、ボウイの好きなドイツ表現主義の画家の絵をヒントにしたという。

 

 サウンドもカッコいい。アルバムは、鋭く硬質なロックと前衛的なインストゥルメンタルで構成されている。冷戦下のベルリン(壁の近くのハンザ・スタジオ)で録音しただけあって、当時の緊迫感が作風にも伝染している。

 

 そして、ボウイの中でも1,2位を争う名曲、ロックのクラシックでもある「Heroes」が入っている。”英雄になれるんだ、たった1日だけならね”と歌うボウイ。ロックンロール調のリフに乗って鳴り続けるブライアン・イーノアンビエントなシンセと、ロバート・フリップのサステインの効いたギターによる響きが素晴らしい。

 

 『ヒーローズ』は、ベルリン2部作(たまに3部作)の2作目である。前作までのアメリカ時代(ブラックミュージックへのアプローチ)に一区切りをつけたボウイは、新たな創造の場として、ベルリンを選び、『ロウ』と『ヒーローズ』を制作した。

 

 プロデュースは、唯一ボウイをコントロールできる男、トニー・ヴィスコンティ。バンドメンバーは、アメリカ時代の手練れのメンバーが主体だが、前作に引き続き、ブライアン・イーノ、それにキング・クリムゾン(当時は解散)のロバート・フリップが参加した。ボウイ史上、最強のメンバーといっていい。

 

 後の影響力という点では『ロウ』の方が評価は高い。しかし、充実度とクオリティではだんぜん『ヒーローズ』だ。ボウイのひらめきなのか、バンドの一体感なのか、前作以上にヨーロッパ色の強い、エッジの効いたサウンドはじつに堂々としている。

 

 2013年1月、突如ボウイは新曲を、3月にはアルバム『The Next Day』(全米2位、全英1位)をリリース。10年ぶりの復活である。その内容は『ヒーローズ』を思わせ、21世紀の名盤を予感させた。

 

 驚いたのはジャケットのデザイン。それは、『ヒーローズ』の上に、白い紙を貼ったようなデザインだった。そこにタイトルのThe Next Dayと記されている。過去を乗り越え、次に向かうというのがデザイナーのコンセプトらしい。ボウイ本人は何も語ってないが、『ヒーローズ』はボウイにとって、それほど重要な意味を持つ作品なのだ。

 

♪好きな曲

 

Heroes

ヒーロー讃歌でもなく、変革を訴えるわけでもないが、なぜか力がわき上がってくる不朽の名曲。オアシス、ニコ、キング・クリムゾンピーター・ゲイブリエルもカバー。

 

 

Heroes

Heroes

 

 

Beauty and Beast

オープニングナンバーにふさわしく、ボーカルやギターの音響の仕掛けがカッコいい、シャープなロックンロール。Heroesと甲乙つけがたい傑作。

 

 

Beauty and the Beast

Beauty and the Beast

 

V-2 Schneider

当時、ボウイが影響を受けたクラフトワークのフローリアン・シュナイダーに捧げたインストナンバーで、テクノ前夜を感じさせるサウンド

 

V-2 Schneider

V-2 Schneider