Vol.30 OFF THE WALL Michael Jackson 1979
名曲、佳曲そろった、元気はつらつ、
楽しさいっぱいのソウル。
オフ・ザ・ウォール/マイケル・ジャクソン
全米シングルチャートトップ10に4曲を送り込んだ傑作、マイケルの実質ファーストソロであり、その後の成功のきっかけとなった作品である。全米3位。
ふり返れば、マイケルにとって最後のソウルアルバムとなった。次作のモンスターアルバム『スリラー』以降は、ソウルの枠を超えて、ロック、ポップスとの融合が図られていく、つまりキング・オブ・ポップへの道へと歩んでいくわけで、その分、ソウルの黒さやしなやかさは中和されていく。
しかし、『オフ・ザ・ウォール』はソウル成分の濃いアルバムだ。ディスコもあり、メロウもありと、この時代らしいブラックミュージックとなっている。きらびやかで楽しさがつまったソウルを味わうことができる。
『オフ・ザ・ウォール』は、ソロアルバムとしては5作目だが、実質的にはファーストソロのようなポジションで扱われることが多い。なぜなら、前作までは主導権はレーベルのモータウンにあったこともあり、マイケルがやりたいことをやれたわけではなかった。
しかしこのアルバムからは部分的にプロデュースも行っており、はじめてやりたいことができた。それが関係していたからなのか、はつらつとした雰囲気に仕上がっている。ジャケットのマイケルもにっこり、笑顔のマイケルなんて、これ以降のアルバムでは見かけない。
プロデュースはクインシー・ジョーンズ。70年代のクインシーはソウルとジャズを一緒にしたような、フュージョン、イージーリスニング中心の傑作アルバムをA&Mから出していた。そのあたりの洗練されたアレンジがここでも発揮されている。
楽曲はダンサンブルでポップな曲、メロウなAOR調の曲など聴いていると楽しくなるものばかり。4曲の全米トップ10シングル(そのうち全米1位が2曲)を出したのも納得できる。
注目曲は、マイケルが作詞作曲をてがけた「Don’t stop till you get enough」。軽快なディスコナンバーでマイケルのファルセットは冴え、独特の節回しでノリノリに歌う。同じくシングルヒットした「Rock with you」、「Off the wall」もメロディとグルーブが気持ちよく、いまではソウルの名曲だ。
シングル曲以外も粒ぞろい。スティービー・ワンダー提供の「I can help it」、デヴィッド・フォスター&キャロル・べイヤー・セイガーといったヒットメイカー作の「It’s the falling in love」も、ポール・マッカートニーがマイケルのために書いた「Girlfriend」(ポールのバージョンは『London Town』に収録)もキュートだ。いずれもシングルカットされたらヒットしていたかもしれない出来ばえだ。
個人的にはマイケルへの関心は『スリラー』あたりまで。ジャクソン5時代を除けば、マイケルは『Off The Wall』1枚で十分だ。マイケルにしても『スリラー』以降、世界的スターにはなったが、トラブル続きで徐々にキワモノ扱いされていく。
それだけに『Off The Wall』でのイノセンスな輝きがいっそう際立つ。マイケルに興味が無くても、70年代ソウルの名盤として聴いてもらえるとうれしい。
♪好きな曲
Don’t stop till you get enough
全米1位、グラミー賞最優秀R&B男性ヴォーカル賞受賞。アレンジもさえている。
Rock with you
全米1位、一晩中、君とロックしたいという他愛もない歌だが、メロディがとてもいい。
It’s the falling in love
パティ・オースティンとデュエット。こういうメロウなポップスも似合う。