Vol.32 MINUTE BY MINUTE THE DOOBIE BROTHERS 1978
ポップでメロウ、さわやかな
ブルー・アイド・ソウルの味わい。
ミニット・バイ・ミニット/ザ・ドゥービー・ブラザーズ
2曲のグラミー賞受賞シングルを含む、ウエスト・コースト・ロックの名盤。バンド史上、最も売れ、最も高い評価を得た。全米1位。
マリファナ兄弟という意味のドゥービー・ブラザーズには、2つの時代がある。ひとつは、豪放で切れの良いギターが印象的な<トム・ジョンストン時代>。もうひとつは、キーボード中心のメロウで洗練された<マイケル・マクドナルド時代>だ。
『ミニット・バイ・ミニット』は、マクドナルド時代>を代表するアルバムである。ドゥービーのファンにしてみれば、ジョンストン派VSマクドナルド派と分かれるところだろうが、それぞれ良さがある。
個人的には、ジョンストン時代では「Long train running」のある『キャプテン・アンド・ミー』が好きだし、マクドナルド時代ではこのアルバムだ。
その理由は、「What a fool believes」と「Minute by minute」という強力なナンバーがあるからだ。どちらも1979年のグラミー賞を受賞している。「What a fool believes」は、<最優秀レコード>、<最優秀ソング>、<最優秀アレンジメント>を受賞。
「Minute by minute」は、<最優秀ポップグループ>を受賞している。特に前者はマクドナルドとケニー・ロギンズが共作した名曲。あのキーボードのリフはちょっとした発明だし、流れるようなメロディも完璧だ。後者もマクドナルド作で、こちらもメロディが心地よく、ゆるやかなグルーブがいい。
この2曲が突出して素晴らしいので、他の曲の印象が少しかすんでしまうが、あらためて全曲通して聴くと、マクドナルドの持ち味である、ブルー・アイド・ソウル色が強いものの、もともとあった、パット・シモンズが得意なカントリーのテイストは健在だ。
それにタイラン・ポーターの黒いベースとダブルドラムが生むキレのあるリズムはファンキー。全体的にまろやかな雰囲気漂う、聴き心地のよい作品に仕上がっている。
洗練されたウエスト・コースト・ロックというと、スティーリー・ダンを思い浮かべてしまうが、それもそのはずでマクドナルドは、一時期スティーリー・ダンに在籍していたわけだし、マクドナルドをドゥービーに誘ったジェフ・バクスターも元スティリー・ダンだ。
中心人物であり看板ギタリストであったジョンストンが脱退した後に、違った音楽性を持つキーボード・プレイヤーのマクドナルドを誘って、特にもめることなく、がらりとサウンドを変えて、すんなりと活動したことは驚きである。
おおらかなのか、いい加減なのか、あるいはスティーリー・ダンみたいなロックをやりたかったのか、ともかくもくろみは成功したということだ。
4年後にドゥービーは解散した。同じ年にはイーグルスも解散。すでにスティーリー・ダンも、リトル・フィートも活動停止、解散しており、アメリカン・ロックが面白かった時代は、いったん終わった。
ふりかえると80年代、アメリカの音楽シーンは、マドンナやマイケル・ジャクソンなどスーパースターの活躍があったものの、英国のそれに比べると、つまらなかった。あくまで個人的な意見だけど。
♪ 好きな曲
What a fool believes
全米1位。共作者のケニー・ロギンズのバージョンもいいけど、やはりドゥービーの方が好み。
Minute by minute
全米14位。アクースティック・ギターで弾くラリー・カールトンのバージョンもなかなか。
How do the fools survive?
スティーリー・ダンのようなファンキーなロックナンバー。