Vol.41 BREAKFAST IN AMERICA SUPERTRAMP 1979
世界中で売れまくった、
プログレ系ポップ。
ブレックファスト・イン・アメリカ/スーパートランプ
4週連続で全米1位を獲得。アメリカだけでも400万枚を売り上げ、ヨーロッパ、オーストラリアでも大ヒット、世界で1800万枚も売れた。本国イギリスでは3位。日本でもCMに曲が使用され、オリコン年間チャート29位とヒットした。
スーパートランプのサウンドを分かりやすくいうと、プログレッシブ・ロックをぐっとコンパクトにして、大げさな展開や冗長なインストパートを無くして、親しみやすくした感じ。いうなれば、プログレ系ポップ。
'70年代の半ばになるとイギリスでは、そういうタイプのバンドが出てくる。有名なところでは、アラン・パーソンズ・プロジェクト、ELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ)、10CC。中期のクイーンも入れてもいい。
スーパートランプは、ロジャー・ホジソンとリック・デイビスという優れたソングライター、プレイヤーの双頭バンドだ。ウーリッツァのエレピが全面に出た、哀愁とドラマティックなサウンドが持ち味。
面白いのは、ホジソンとデイビスの書く曲が対照的なことだ。ホジソンは、シンガーソングライター然とした、弾き語りでも似合う曲が得意だ。エルトン・ジョンやギルバート・オサリバンのような憂いを含んだ曲はいかにも英国的といっていい。
デイビスはR&Bからの影響を感じさせる、アレンジで魅力を輝かせる曲作りが得意だ。曲のクレジットは、ホジソン・デイビズとなっているが、たいていメインライターがリードヴォーカルをとることが多い。ホジソンの歌声はハイトーンなので分かりやすい。
ヒットしたシングルはホジソン作が多い。本作からは4曲がシングルカットされたが「Logical song」(全英7位、全米6位)、「Breakfast in America」(全米10位)、「Take the long way home」(全米10位)と3曲がホジソン作。
デイビスの「Goodbye stranger」もよい曲だと思うのだが、全米15位、全英57位。ホジソンの曲の方が親しみやすく、シングル向きなんだろう。
スーパートランプの人気が高まりだしたのは、3作目『CRIME OF CENTURY』から。この時はまだプログレッシブ・ロック色は濃い。なかなか楽曲が充実して傑作である。
それでもサウンドは徐々に親しみやすさを増し、プログレッシブ色は少なくなっていく。本作でも基本的なスタイルは変わっていないが、ポップ度は高い。そこがヒットの理由だろう。
とは言え、なぜこうもアメリカで大ヒットしたのか。楽曲が良いのは分かるが、サウンドが急に変わったわけでもない。当時は、中庸の美学をもったフリードウッド・マックが人気を博しており、ロックでも軽さや親しみやすさが受けた時代だったのかもしれない。
さらにアルバムタイトルや楽曲に<アメリカ>、<ハリウッド>といったアメリカに関する言葉が使われているし、あの一度見たら忘れられないアルバムジャケット(ジャケットデザインはグラミー賞受賞)のアメリカをイメージしたユーモアも影響したのではないか。
ビートルズが解散しなかったらこんな感じになっていたかもと友人が言ったのが印象的で、ビートルズ各自のソロ活動から考えると、言いえて妙だなと思ったものだ。
♪好きな曲
The logical song
ボードビル調の曲で、デイビスはこの曲が気に入らなかったらしい。
Goodbye stranger
デイビスには珍しくシンプルで親しみやすい。ホジソンに対抗したか。
Lord is it mine
ホジソンらしい美しいメロディのバラード。