若い人のための洋楽ロック&ポップス名盤案内

やがて聴かれなくなるかもしれない'60~'80の海外ロックやポップスの傑作(個人的な意見)を紹介します。

Vol.43  Country Life ROXY MUSIC 1974

洗練とえぐみによる様式美が完成、

旬を迎えた人気アルバム。

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カントリーライフ/ロキシー・ミュージック

 様式美を確立し、成熟期を迎えたロキシーの代表作。楽曲、演奏のクオリティはいちだんと進化した。全英3位。全米チャートでは37位とアメリカでも初のトップ40入り。

 

 『カントリーライフ』は、ロキシーのアルバムの中でも人気の高いタイトルで、『サイレン』とともに、ロキシーがバンドとして最も脂が乗りきった時期のアルバムだ。実際に評価も高く、ローリングストーン誌が選んだ<The 500 greatest album of all time>に選ばれている。

 

 ちなみにロキシーのアルバムでは、本作以外に『アヴァロン』、『サイレン』、『フォー・ユア・プレジャー』が選ばれている。そこまで評価されているとは正直驚いた。で、うれしい。

 

 本作を出す少し前あたりから、ロキシーは人気も実力も上昇中であった。デビュー作、2作目にあった粗削りでアバンギャルドな部分は消えて、楽曲も洗練され、演奏力も向上していた。

 

 3作目『ストランデッド』で初の全英1位を獲得。バンドリーダーのブライアン・フェリィのソロも1作目、2作目とヒットし、やれるという確信も自信もついたのだろう。

 

 サウンドもこの頃から変化も見せた。2作目までいたブライアン・イーノが抜けて、代わりに、才能があって器用なエディ・ジョブソン(後にU.K.を結成してブレイク)が加入したのも影響したし、人気のあったイーノがいなくなり、フェリィがイニシアチブを握れたことも大きかった。

 

 4作目となる『カントリーライフ』は、全英1位こそ逃したものの、前作よりも充実した内容に仕上がった。楽曲の幅が広がり、アンサンブルも緻密になったし、聴きやすさも増した。

 

 ハードロックでもなく、ブルーズロックでもなく、プログレッシブロックでもない、風変わりなスタイルはロキシー独自の様式美として完成されている。

 

 ほとんどの曲はフェリィ作だが、ギターのフィル・マンザネラ、サックス、オーボエのアンディ・マッケイの書いた曲も際立ってよく、この二人無しにはロキシーは成り立たないことがよく分かる。

 

 また、エディ・ジョブソンの貢献も大きい。彼のエレクトリック・ヴァイオリン、キーボードはサウンドに華やかさや厚みをもたらしている。とくに「Out of the blue」でのヴァイオリンソロはみごと。他の曲でもストリングスで彩りを加えている。

 

 本作はアメリカでもはじめてトップ40入りしたわけだが、アメリカンロックのような「Prairie rose」や「If it takes all night」、ファンクのような「Casanova」といった曲が受けたかもしれない。とはいえ、ロキシーらしい解体と再構築のアプローチによる、<~のような>フェイクなテイストはしっかり出ている。

 

 次作『サイレン』を出した翌年の’76年に、ロキシーは解散。’79年に再結成するが、そこからのロキシーはバンドというよりユニットという印象で、サウンドも大きく洗練されていく。そんな完熟ロキシーも大好きなのだが、個人的にはえぐみのある美意識をたたえた本作の頃のロキシーに最も愛着を感じる。

 

♪好きな曲

 

Out of the blue

ライブの定番曲。ライブ盤『Viva ! Roxy Music』でのバージョンはスリリングでカッコいい。

 

The thrill of it all

ロキシー流ハードなロックンロール。ジョブソンのヴァイオリンがいい具合に音に厚みをつけている。

 

Prairie rose

マンザネラ作のファンキーなナンバー。めずらしくスライドギターが鳴っている。