Vol.23 Stop Making Sense Talking Heads 1984
絶頂期の自信と勢いが
みなぎった、ファンキー大宴会。
ストップ・メイキング・センス /トーキング・ヘッズ
トーキング・ヘッズの代表作といえば、『リメイン・イン・ライト』(全米19位)だ。ロックの名盤でもある。でも、個人的な意見でいうと、あれはヘッズのディスコグラフィーの中でも異色作だと思う。
カッコいい部分もあるのだが、はじめてヘッズを聴く人におススメの作品かというと少し躊躇する。その点、『ストップ・メイキング・センス』は入門盤にうってつけだ。
ライブ盤ではあるが、主な代表曲は入っているし、この時期のヘッズは『リメイン・イン・ライト』での経験が上手く昇華され、バンドはピークを迎えており、その勢いと自信がパフォーマンスにみなぎっている。
『ストップ・メイキング・センス』は、ヘッズのライブドキュメンタリー映画『ストップ・メイキング・センス』のサウンドトラックでもある。この映画は、83年のツアーを撮影したもので、監督は後に『羊たちの沈黙』で名を馳せることになるジョナサン・デミである。
映画『ストップ・メイキング・センス』は、素晴らしい音楽映画で、日本で公開された時も結構話題になった気がする。僕もその評価につられて渋谷パルコで観たのだが、噂に違わず感動したものであった。
ヘッズのパフォーマンスはもちろん、舞台演出はアートスクール出身のバンドらしく斬新であったし、それらをカッコよく映した撮影もよかった。だからできれば映像で観てほしい。(YouTubeで観られる)。
もちろん、音だけでも十分素晴らしい。ここでのヘッズはファンクバンドである。ヘッズの面白さは、ポストパンクのバンドらしい実験精神と、ファンクやソウルをこねくりまわして作った、ぎくしゃくした先鋭的サウンドだ。
ところが、この時期のライブでは、バンドメンバー以外に『リメイン・イン・ライト』にも参加したメンバーが参加、しかもすべて黒人ミュージシャンで9名編成という大所帯となった。
おかげで、ぎくしゃくした部分が後退したものの、グルーブは強まった。ロック、エレクトロポップ、ソウルといったタイプの曲が繰り広げられるわけだが、いずれもファンキーでダイナミックだ。
デヴィッド・バーンが一人ギター(とラジカセ)で「Psycho Killer」を歌うというミニマルな出だしだが、曲が進むごとにメンバーが加わり、熱量もぐんぐん上昇する。
1983年のヒットアルバム『スピーキング・イン・タングス』(全米15位)からの大ヒットシングル「Burning down the house」(全米9位)あたりで、テンションは一気呵成に増幅されファンキー度がアップ。『リメイン・イン・ライト』からのシングル「Once in a lifetime」、「Crosseyed and painless」も、スタジオ盤より迫力がある。
映画が高評価だったわりには、アルバムは全米41位と振るわなかったが、これもヘッズの代表作であり、80年代アメリカンロックの屈指のアルバムと言っていい。現行のCDは完全版で全16曲(オリジナルは全9曲)なので、完全版がおススメ。
♪好きな曲
Take Me To The River
78年発表の2ndアルバムからのヒットシングルで、アル・グリーンのソウル名曲のカバー。ライブの方がテンポも速くファンキー。
Girlfriend Is Better
バーンが大きなスーツを着て変なダンスを踊る、日本のCMでも使用された、ファンキーなエレクトロポップ。
What a Day That Was
バーンとブライアン・イーノのコラボアルバム収録の曲。グルーブが増幅している。