Vol.44 At Fillmore East THE ALLMAN BROTHERS BAND 1971
ライブで最も真価を発揮する
バンドの圧巻のパフォーマンス。
フィルモア・イースト・ライブ/オールマンズ・ブラザーズ・バンド
バンドの代名詞的作品であり、ライブアルバムの名盤として必ず挙げられ、スタジオ盤が色あせてしまうくらい、迫力あるパフォーマンスを聴くことができる。全米13位。
オールマン・ブラザーズ・バンド(以下、オールマンズ)の真価はライブで最も発揮される。2作目の『アイドルワイド・サウス』も、5種連続の全米1位を獲得した『ブラザーズ&シスターズ』も、楽曲も演奏も素晴らしいし、サザン・ロックの名盤だ。
それでも、迫力と懐の深いインプロビゼーションをたっぷり堪能できるという点で本作の方がはるかに魅力的だ。
すでにオールマンズは、2枚のアルバムを発表し、評価も人気もセールスも上向きであった。しかし、メンバーは自分たちの力を真に証明するにはスタジオ盤では十分ではないと不満を持っていたという。
そこで、3作目はライブ盤を作ることにした。再び名プロデューサートム・ダウドを迎え、伝説的なライブハウスであるフィルモア・イーストで3日間ライブを行い、そこから収録曲を選んだ。
オールマンズはジャムバンドでもある。「僕らにあるのは大ざっぱな編曲だけだ。曲のレイアウトだ。それからバンドのメンバー各自にまかされたソロがあるんだ」とデュエイン・オールマンが言うように、即興演奏が特徴だ。
スタイルはブルーズやカントリーから影響を受けたロックだが、即興性を大切にする。カバーだろうが、オリジナルだろうがそれは一貫している。
しかもツインギターにツインドラムということもあり、演奏はとてもダイナミック。本作ではどの曲も厚みと迫力がある。聴きどころは即興がさえる長尺の曲だ。
有名な「In memory of Elizabeth Reed:エリザベス・リードの追憶」も、人気曲「Whipping post」もスタジオ盤よりかなり長いが、まったくだれない。それどころか、とてもスリリングだ。どちらもデュエインとディッキー・ベッツのギターが素晴らしい。
この2曲はアルバムのハイライトといっていい。個人的にはグルーブのかかったジャムナンバー「Hot’ Lanta」も好きだ。グレッグ・オールマンのオルガンソロがいい。
オールマンズは本作で名実ともにトップバンドの地位をつかんだ。ところが、本作リリース直後、デュエインがオートバイ事故で死去。翌年、追悼盤的な『イート・ザ・ピーチ』(全米4位)を出すが、同年の秋にベースのベリー・オークリーがまたもやオートバイ事故で亡くなる。
新しいメンバーによる『ブラザーズ&シスターズ』は大ヒットしたものの、その後はメンバー間の不和やトラブルにも見舞われ、らしさも輝きも失っていく。
アルバムタイトルに<フィルモア>が付いたライブアルバムがいくつかあるが、たいていライブの名盤である。フィルモア・イーストでは、マイルズ・ディビス、フランクザッパ&マザーズなど。
フィルモア・ウエストでは、アレサ・フランクリン、キング・カーティスなど。すべて聴いたわけではないが、どれも素晴らしかった。
♪好きな曲
In memory of Elizabeth Reed
ロック史に残る名演。ブルーズ、ラテン、ソウルジャズが混然となって突っ走っていく。
Stormy Monday
僕はビリー・ホリディで知ったが、ジャズでなく、ブルーズナンバー。けだるく渋い。
Whipping post
スタジオ盤は5分だが、ここでは22分!ツインギターが縦横無尽に飛び交うさまが圧巻。