Vol.34 CARAVANSERAI SANTANA 1971
熱気とクールネス、圧倒するほど
ダイナミックなアンサンブル。
キャラバンサライ/サンタナ
フュージョン時代の最高作だ。リズムの洪水の中を縦横無尽に駆け巡るギター、ドラマティックな展開に圧倒される。インストゥルメンタル中心ながら、全米8位。
一般的には、フュージョン期の最高作と言われる『キャラバンサライ』だが、個人的にはサンタナ全作の中でも、1、2を争うアルバムだと思っている。(といっても90年代以降のアルバムはあまりちゃんと聴いていませんが)。
‘69年のアルバムデビュー以来、早くも2nd、3rdという名盤を生み出したサンタナだが、この時期は、さらに表現への欲求も高まり、創造性も上昇していたのだろう。4thアルバムとなる本作では、スケールアップしたサウンドを聴くことができる。
録音メンバーには、後にジャーニーを結成する、ニール・ショーン、グレッグ・ローリーといった、いわゆる黄金期の面々が参加、カルロス・サンタナ自身が大きな影響を受けたマイルズ・ディビズ、ジョン・コルトレーンからのインスピレーションが色濃く反映されたことで、魅力ある楽曲と演奏が生まれたことが大きい。なるべくしてなった最高作と言っていい。
本作はインスト曲中心で、組曲のような構成になっている。明確なコンセプトがあるわけではないが、サウンドは全編同じトーンで貫かれている。
フュージョンっぽいとは言われるが、ダイレクトに表現されているわけではなく、ブルーズとアフロ・キューバンのハイブリッドというサンタナサウンドの基本形に融合されているといった方が正確だ。
そのため、それまでのこってりとしたラテンロック色は少し抑えられ、代わりにジャズやファンクのもたらすクールネスが際立っている。
インスト曲中心のため、サンタナサウンドの骨格である、ドラム、パーカッションのダイナミックなリズムはくっきりと表現され、その音空間の中をギターやキーボードが縦横無尽に駆け巡る様がよく伝わってくる。
幕開けこそ静かだが、徐々に熱気が立ち昇り、3曲目の「Look up」あたりからカルロス・サンタナのギターが加速、そのまま最初のクライマックス「All the love of the universe」へと突き進む。後半のたたみ込むようなギター、オルガンのソロが痛快だ。
ボサノバの法王、アントニオ・カルロス・ジョビンの「Stone flower」でいったん落ち着くが、ジャム風ナンバーも挟んで、最終曲「Every step of the way」へとなだれ込む。ドラマティックなオーケストレーションに彩られた大団円にふさわしい曲で、その迫力に圧倒される。なるべく大きな音で聴くといい。快感が倍増する。
ところで、このアルバムはマイルズ・ディビズの『スケッチ・オブ・スペイン』への返答といった解釈を何かで読んだ。言われてみれば、ラテンの官能と叙情性、劇的なカタルシスが耳に残るところが共通しているように思える。
特に「Every step of the way」と『スケッチ・オブ・スペイン』の最終曲「Solea」の感触はよく似ている。マイルズを敬愛していたカルロスのことだ。たぶん意識したのではないだろうか。
♪好きな曲
Look up(to see what’s coming down)
アフロ・キューバンのリズムと、推進力のあるカルロスのギターがカッコいいファンク。
Just in time to see the sun
数少ない歌モノの1曲。歌はカルロス。アルバムの中では最もロックっぽい。
Song of the wind
軽やかなジャズボッサのリズムに乗って、カルロスのギターがよく歌っている。