Vol.38 CLOSEUP Frankie Valli 1975
ゴージャスでスウィート、
粋な70’アメリカンポップス。
瞳の面影/フランキー・ヴァリ
フォー・シーズンズのリード・シンガー、フランキー・ヴァリの3作目のソロアルバムで、70年代アメリカンポップスの名盤といっていい。アルバムは全米51位だったが、全米1、6位のヒットシングルを収録、素敵なブルーアイドソウルが聴ける。
ヴァリのソロといえば、全米2位の名曲『Can’t take my eyes off you(君の瞳に恋してる)』の入った第1作の方が知られているかもしれないが、本作の方がだんぜん好みである。
ストリングスやホーン、女性コーラスがふんだんに使われたメロウでスウィートな口あたりが、いかにも70年代の都会的なアメリカンポップスという感じでたまらない。
フォー・シーズンズはアメリカ60年代を席巻したグループで、1962~78年までにシングル全米1位が7曲、トップ3入りが12曲、トップ10入りが19曲、トップ40入りが39曲と輝かしい実績を持っている。
2014年に公開された映画『ジャージー・ボーイズ』は、彼らの栄光と挫折を描いたもので、好きにならずにはいられない魅力があり、エンドタイトルの後に思わず拍手したくなったほど。
本作が発表された少し前の1972年頃、当時の所属レーベル、モータウンとは関係がよくなかったようでフォー・シーズンズは低迷。そこでヴァリは、再起をかけて新興したレーベルに売り込みをかけ、契約を結んだ。そして作られたのが本作である。
75年3月に出したシングル「My eyes adored you(瞳の中の愛)」は全米1位を獲得。同年にはフォー・シーズンズも全米1位、3位とヒットシングルを連発、ソロ、グループともにみごとに復活を遂げた。
ヴァリの歌が良いのは言うまでもないが、フォー・シーズンズ人脈の製作スタッフがいい仕事をしている。プロデュ―スはボブ・クリューとボブ・ゴーディオ。クリューはヒットメイカーのプロデューサー、ゴーディオはフォー・シーズンズのメンバーで作曲、キーボード担当。ヴァリとフォー・シーズンズのヒット曲のほとんどはこのコンビから生まれている。
全体的にメロウで落ち着いた雰囲気のアルバムだが、後半にヒットシングルが登場するあたりから熱量が高まり、聴き進むうちにぐんぐんと魅かれていく。聴きどころは、美しいバラード「My eyes adored you(瞳の中の愛)」と、ゴージャスなディスコチューン「Swearin’ to god(神に誓って)」だ。
前者はヴァリ復活のきっかけを作った曲だ。73年に作られて未発表となっていたが、ヴァリとゴーディオがモータウンから4000ドルで買い取り、レーベルの社長に5回聴かせて契約を取ったという。
後者はアルバムでしか聴けない長尺バージョンだ。名手チャーリー・カレロ(ローラ・ニーロや山下達郎の作品のアレンジも手がけた)のメロウとグルーブが一体となった、キラキラしたアレンジが素晴らしい。
フォー・シーズンズのベスト盤には、ヴァリのヒット曲も収録されていることが多いので、ついでにフォー・シーズンズも聴いてほしい。ヴァリが気に入ったのなら、たぶん気に入ると思う。そしたら『ジャージー・ボーイズ』も観たくなる。完璧なコースだ。
♪好きな曲
Swearin’ to god
シングル2弾、全米6位。シングルは4分ほどだが、アルバムバージョンは10分。
My eyes adored you
映画『ジャージー・ボーイズ』で娘とヴァリとの幸せなシーンと悲しいシーンで流れていた。
I can’t live a dream
70年代らしいメロウ成分たっぷりのソウルナンバー。